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カラテ物語 

Written by:  G.G. Oyama

Illustrated by:  木村僚佑

                           Ryou Kimura

新年明けましておめでとうございます。

皆様の素晴らし年になる事こころより祈念します。

今年も気合を入れてカラテ物語書き続けます。

健康第一 オス

 

カラテ物語 第二部

その一 後ろ蹴り 他流派

真太郎先生を応援していた僕の心臓が破裂してしまうのではないかと思った、あのジャパンカップの決勝戦、その大会会場の凄まじい熱気がそのまま道場に流れ込んできた。

大会後の1~2カ月は道場は気合が溢れすぎるほど充満していた。

真太郎先生がチャンピオンになったことが道場生みんなに想像以上の元気を与えたようだ。勿論、僕も有り余る気合をどうしていいか分からないぐらいの状態だった。

それでも火山の爆発のようだった気合が時間が過ぎるにしたがって落ち着いてきた。

 

僕のクラスの稽古は受け技、後ろ蹴りにはいった。

受け技も難しいが、後ろ蹴りはホントむずかし。

前蹴りや回し蹴りは何とか格好がついたように思うが、後ろ蹴りは話にならない。

先生が「カラテの基本技の中に一撃必殺の技はいろいろあるが、後ろ蹴りはまさに、一撃必殺の技と言える。後ろ蹴りは、良く道場内の組手や大会で見ることがあるがなかなか決まらない。一見すると後ろ蹴りのようにみえるが鋭さがない。ハッととした呼吸で決まらなくてはいけない技が、身体が回るようにして蹴りが出るからだ。後ろ蹴りは軸足が回るのではなく一瞬のうちに軸足の踵を踏み込むのだ、そこが難しい」稽古中に先生が説明してくれたが軸足が“回る“のと”踏み込む”の違いが良く分からなかった。

「回るのと踏み込むのでは上体の使い方、両足の使い方がまったく違う、そこを先ずわからないと後ろ蹴りをマスターするのは出来ない。後ろ蹴りは教典2にあるが、一生稽古しないと身に付かない技なんだ、もっともカラテの基本技はみんなそうだな、ガハガハ・・・」と何時もの様に大きく口を開けて笑って話してくれた。

先生の笑うスタイルを見ているとなぜか後ろ蹴りが簡単にできそうな気がするから不思議だ。先生の笑い方はマジックだ。

「どんな技でもいつも追い駆けないと消えてしまうか、悪い癖がつくのは分るな、先の呼吸から後ろ蹴り一発で倒そうとするのもいいが、難しい。ポイントは後ろ蹴りの態勢を自然につかむ技の流れだ。まず最初の技を下段回し蹴りで攻めて、その蹴り足を戻さず後ろ蹴りに繋げる。下段を攻める一番ポピュラーなコンビネーションは“突きから下段“このパターンだが、そこに後ろ蹴りをつなげるといい」

先生の指導で下段から後ろ蹴りの稽古に入る。

何となくではあるが後ろ蹴りのような格好になっているように感じ、ちょっと興奮した。

先生が「ロウーを蹴って、ミスした時、その蹴り足を戻そうとする奴が多い、そのままの態勢で後ろ蹴りに入ると無理なく蹴れる。基本稽古の大切ことは一つ一つ技の特徴を身体でつかむ、身に付けることだ。分かるか、型を稽古するのも技の流れを自然こなせるようにする為でもあるんだ、ただ蹴るではなく、ハッとした呼吸だ、忘れるな!」

先生の叱咤で道場の中が熱くなっているのを感じて、僕はワクワクしてしまった。

大きなミットを使っての稽古で、ツトム先輩と組んだが、先輩の回転が遅いのか蹴り足の踵がミットにヒットしないで何発も蹴りが外に流れてしまう。

ツトム先輩渋い顔つきをしながら、「眼が回る、天井も回る・・・」としきりにボヤいていた。僕は笑いをこらえるのに苦労した。

僕の番になって時々だが蹴り足の踵がミットにくいこむのが感じられた。

ツトム先輩眼を大きくして最初は驚いた顔を見せたが、直ぐになんか怒ったような顔つきになって、僕に先生が言っていた様に「オイ、回るんじゃないよ、踏み込むんだ!ホレホレ」自分の事は棚においてアドバイスをくれる。

もしかしてツトム先輩やきもちを焼いているのかも知れない。

「次の稽古は相手の受け技を利用したり、誘ってからの後ろ蹴りをやる。みんな教典2を必ず読んで来い、いいか蹴ろう、蹴ろうとしないで、まずその技の特徴、態勢を身につけろ!焦るな、いいか」と言いながら、なぜか先生の視線がツトム先輩に向いた。

ツトム先輩が汗を流しながら渋い顔をみせ小さい声で「オチ」。

笑が出そうになった。

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年が変わって僕は高校生になった。高校入学するのに、いろいろと担任の先生や母親と相談したがM高校を選んだ。

M校は特待生の制度があり、僕の成績ではまず問題なく授業料が免除されるのではないかと思いM校を選んだ。経済的な負担を母親にかけたくなかった。

母親もホッとしていた。

卒業式は何となくではあるが感傷的なってしまった。

慎吾が別れるときに、僕の机の前にもじもじしながら寄ってきた。

思わず構えて仕舞ったが、「オイ、武蔵いろいろあったが忘れてくれ、お互いに頑張ろうぜ」と言ってきた。慎吾も根は良い奴なのかもしれない。

僕が「あっ~、俺は何とも思っていないよ、君も頑張れよ」と言うと慎吾が安心した顔つきで、そっと右手を出してきたので僕も自然と彼の手を握った。

中崎さんが遠くから見て微笑しながら音をたてないように拍手をしていた。

何となく心の中が温かくなってきた。

中崎さんは日比谷高校に入った。秀才が溢れるほどいるらしい。

勉強が大変らしいが、カラテの稽古は続けると言っていた。安心した。

 

M校に入学してから1週間ぐらい学校の雑用で稽古に出られなかった。

M高校の制服はブレザーでネクタイも締める。

ちょっと照れたが制服だし、それに皆着ているものなのですぐ慣れると思った。

特待生の資格で入学したが、成績が年間を通じて学年の5番以下に落ちたらその資格がなくなると入学時に誓約書に署名された。気合いが入った。

M高は M大学の付属高校だった。

もしかしてそのまま高校の成績が優秀ならば大学も特待生で進めるかも知れない。

M校は長髪を認められているので殆どの生徒が長髪だった。中には肩にかかるぐらいのばしている人もいた。長髪は認められているが、染めるのは禁止されている。

デモよく見ると中にはちょっと茶髪がかかった感じの生徒もいた。

クラス中が長髪に見えたが2~3人短髪の子もいた。

僕の隣の席の子は短髪ではなく珍しく坊主頭だった。

その子は両足を大きく開き、ふんぞり返るような格好で座っていた。

ガッチリした身体に顎の張った四角い顔、細い眼が光っているように見えた。

何となく雰囲気が近寄りがたく、応援団の部員かと思った。

M校の応援団は結構有名だった。

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担任の先生はマシュルームカットの北原先生で音楽の先生だった。

チョット変わった担任の先生。見るからに芸術家と言うスタイルだ。

最初のクラスで皆に自己紹介するように、趣味まで話せと北原先生が指示してきた。

僕の番になるまで何となくドキドキした。

僕は趣味はカラテと言いたかったがなんとなく読書とさらりとかわす。

隣の坊主頭の子が立ち上り自己紹介を始める。

顔には微笑が浮かんでいたが目線には優しさが感じられなかった。

「名前は中矢忠治、M中出身、趣味はカラテ、カラテは2020年東京オリンピックの種目になりました。みんなもカラテ部に入部して鍛えてください、カラテは素晴らしい武道です。オス」胸を張って、物怖じしない態度だった。

カラテ部と聞いて、僕は驚いて中矢君をまじまじと見た。

カラテ道をはっきり自分の趣味と宣言するように言った態度が自信にあふれているように見え、きっと黒帯かもしれないと思った。

教室の雰囲気がチョットざわついた。

 

先生が最後に中矢君の話を引き継いで、クラスのみんなに何か一つ部活をとるようにと、結構強く奨励してきた。それから各部の紹介が載っている案内書を配った。

案内書の中に散歩部があったのにはマジ驚いた。どんな散歩をするのかチョット想像してみたが頭に浮かんできたのはサボリ専門の連中だけだった。

僕の一番目を引いたのが空手部だった。流派は伝統派で結構歴史があるようだった。

一度見学に行こうと思った。休憩時間、隣の中矢君が話しかけてきた。

「オイ、お前の名前大郷武蔵か、スゲ~名前だな・・」と始まった。ちょっとムカついたが、顔に出さないようにした。その後いろいろと質問してきた・・・何かスポーツやっているのか?とか彼女はいるのかとか?・・・僕はきっとカラテ部に勧誘するのだと思った。

僕の想像した通リ話がカラテのことになり「面白いぞ、楽しいぞ、誰でも強くなれる、お前のような細い体の奴も大丈夫だ・・」とか最後に「カラテ部はイメージとしてなんか体罰やしごきがあるように見えるが、うちのカラテ部は先輩のいじめは絶対ないよ、一度稽古をみに来いよ」上から見下ろすように誘ってきた。

ちょっと、その部の勧誘がなんとなく強引に感じた。

同時に同じクラスなので毎日顔を合わせることになると思うと気分が重くなった。

もう少しで僕もカラテ稽古しているんですと言おうと思ったが何故か思いとどまった。でもいつか言おうと思う。

「そのうち見学に行くよ」と返事をする。

 

学校の帰りにツトム先輩にカラテ部の事をラインをする。

きっとエキサイトして電話が来ると思った。

ツトム先輩から直ぐにメールが来た。「オイ、タケゾウいつ道場に顔を出すんだ?」

今日の夜のクラスに出ますと返信すると、「必ず来い」とすぐに返事が来た。

道場に顔出すと、真太郎先生が「オッ、げんきか?M校だってなぁ、あそこの大学は柔道が強い。何回も全国大会で優勝しているぞ、・・たしかカラテ部あったな、伝統派だと思ったが」「オス、伝統派です」そう答えて先生にワールド大山とどこが違うんですかと聞こうと思ったが稽古の時間になっていたので次の機会にしようと思った。

稽古は後ろ蹴りの基本とその応用だった。

“ハットした呼吸“で回転して蹴る・・と頭の中でイメージしているのだがまだまだ軸足が回っているように感じて蹴りに鋭さがない。ホント後ろ蹴りは難しい技だった。

 

次の週、昼の時間弁当食べていたら中矢君が「オイ、大郷部活なんに決めたのか?」と聞いてきた。まだ考え中だと言ったら「カラテ部にしろ、俺が強くしてやる」なんて格好つけて、いつもように上から見下ろすように言ってきた。

カチンときたが我慢した。授業が終わった後見学に行く。

空手部は地下一階あった。剣道部が隣にあった。

稽古はまだ始まっていないようだったが、中矢君が茶帯を締めて、前屈立ちから正拳の稽古していた。凄い形相だった。なんか顔で稽古している感じである。

見学に来た僕を見つけて傍まで来たとき、いきなり「ヤッー」と気合を入れて正拳を僕の顔の前に突き出した。

“アッ“と思った僕の顔に道着のすれる音と嫌な中矢君の体臭が包んだ。

眼の前ににやついた四角い大きな顔があった。オレ~と闘争心が叫んだ。

続く

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